BEST開発の背景と経緯
空調設備分野の年間消費エネルギーシミュレーションツールとして30年以上前に開発されたHASP/ACLD(動的熱負荷計算プログラム)とHASP/ACSS(空調システムシミュレーションプログラム)およびこれを基に開発された関連プログラムには多くの問題を抱えており、この諸課題を解決するために、また、地球環境問題解決の有効手段を求めるために、HASP/ACLD・ACSSに代わるツールとしてのBESTの開発が2005年に着手されました。
開発の主たるテーマは次の事項です。
- (1)地球資源・環境問題から省エネルギー、CO2排出量の削減が要望されている現在、建築物・空調設備のみならず、照明設備、給湯設備、昇降機設備等をも含めた建築物の総合的なエネルギーシミュレーションプログラム
- (2)研究者、設備設計者、施工管理者、維持管理者、建築設計者、建築企画者、建築主等のあらゆる部門の者が、建築物ライフサイクルのあらゆるステージで利用できるユーザーフレンドリーでユビキタスなプログラム
- (3)学術的にレベルの高い、グローバルな位置づけと世界への普及に繋がるプログラム
- (4)普及に繋がる費用負担の少ないプログラム、また、費用が多くても利用価値の高いプログラム
- (5)バージョンアップ業務および、新プログラム開発を可能とするメンテナンス体制と資金確保システムの構築
- (6)若手プログラム開発者への技術の伝承と育成環境の構築
- (7)著作権の所在を明確にし、第三者のプログラム開発を可能とする運用基準の設定
2005年3月に(社)建築設備技術者協会(JABMEE)が事務局となり意見交換・協議を重ね、21世紀の技術の粋による、社会のニーズに応えるプログラムとなる新世代HASP/ACLD・ACSS開発事業の企画書が作られ、HASP系プログラム開発に関わった大学教授・研究者・開発者、今後関わるべき若手関係者、関連各団体が参画する事業が始まりました。
2005年6月に事業推進事務局がJABMEEから(財)建築環境・省エネルギー機構(IBEC)に移り、2005年10月に国土交通省住宅局の支援による「環境負荷削減のための建築物の総合的なエネルギー消費算出ツール開発のためのガイドライン作成に関する研究会」がスタートし、2006年3月に報告書(ガイドライン)が提出されました。
このガイドラインを基に、2006年4月に「企画・設計段階から運用段階にわたる建築物の総合的なエネルギー消費算出ツールの開発普及委員会」がスタートし、2008年3月に「The BEST Program:BEST-専門版0803」がリリースされました。
BESTコンソーシアムの組織設立とその機能
2008年5月にBESTの継続的な開発・運用・支援活動を目的とした「BESTコンソーシアム」がIBEC内に設立されました。
その内部組織として、企画・開発委員会(村上周三委員長)と運営・普及委員会(坊垣和明委員長)が設けられました。
企画開発委員会では下図の組織体制を構築し、BESTプログラムの機能拡充や普及に関する活動を行っています。
普及委員会では、全国のあらゆるユーザーを対象に最新開発情報を含めたBESTの説明会と体験講習会を開催し、また、BESTホームページや専門誌を通じて情報を提供し、会員の募集とBESTの普及に努めています。
これら委員会の諸活動により、若手プログラム開発者への技術の伝承と育成環境の構築、バージョンアップ業務および新プログラム開発を可能とするメンテナンス体制と資金確保システムの構築、研究者・設備設計者・施工管理者・維持管理者・建築設計者・都市建築企画者・建築主等のあらゆる部門の者があらゆるステージで利用できるユーザーフレンドリーなプログラムを実現する継続的な環境が整備されました。