IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

住宅・建築SDGs推進センター理事長賞第1回SDGs住宅賞

「巡る間」

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建築主 個人
設計者 Tyfa/TakaakiFuji+YukoFujiArchitecture、株式会社エリアノ
施工者 三物建設株式会社
建設地 神奈川県逗子市
構造 木造軸組工法(主架構の木材はプレカットせず使用)
階数 地上2階
延床面積 59.62m2

講評

 持続可能な世界をつくるためのSDGs17ヵ条の中で、建築に直結しているのは、「つくる責任つかう責任」「パートナーシップで目標を達成しよう」ではないかと思う。省エネや環境配慮につながることは、今や標準仕様となっており、設計者にとっての課題は、発注者や施工者を含む関係者たちとのパートナーシップだと考える。住宅は設計者がどんなに頑張っても、それだけでは持続可能な建築とならない。特に住まい手の理解と共感と愛情が必要だ。
 「巡る間」は、若い世代の設計者と一見さんの施主との間にできた住宅。立地は歩いて楽しいまちが確立されている逗子駅から徒歩圏の谷戸で、狭小敷地、近隣商業地域、準防火地域といった都市的立地である。前面道路は狭く交通量の多い計画道路で、新築部分はそこに該当するが当面計画は進みそうもない。設計者は解体移築が容易で外壁面に極力開口を設けず、風・光環境をハイサイドで享受する3間×3間のナイングリッドの2層ワンルームを提案した。大工の減少から木構法の継承を案じ、流通品木材を露出ボルトで締める構法の提案もしている。2階スノコが水平構面、自然通風、自然採光を担い、サーキュラー建築を実現している。外断熱により室内に露出された耐力面材が吸音、吸湿、耐震、光の乱反射という様々な特徴を有効利用しており、最小のエネルギーで最大の効果を生み出している。設計者は、日常は大手組織事務所で海外の超高層ビルの設計を手がけているという。このようなミニマルな住宅設計にどのような取り組みをしているのか興味深かったが、環境シミユレーションでは、超高層も狭小住宅も同じ脳を使うという。長期課題と短期課題を両輪のように取り組むことで相乗効果を生み出しているのだと感じた。微小な環境の違いをつくって身体の感度を高めるという設計者の思想が施主の感覚を研ぎ澄まし、自らがカスタマイズしていく建築となることを期待する。そんな、建築主と設計者とのコラボレーションを評価し、今回設立されたSDGs住宅賞に値する作品とした。

 

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