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IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

硝子繊維協会会長賞(新築部門)

レトロモダンな家

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撮影:撮影:髙田 健

建設地 埼玉県所沢市
設計者 加藤裕一KSA一級建築士事務所
施工者 (株)志賀工務店
延べ面積 86m2
地上階/地下階 1/0
構造 木造

講評

本受賞作品はリタイア後の人生を平穏に慎ましやかに暮らすことを望んだ老夫婦が住み慣れた場所で建て替えた小さな家として、外観も平面計画も一見する限り何の変哲も無い簡素な住宅にしか見えない。しかしよく目を凝らすと単純で無表情にすら見える端正な表現にパッシブな環境性能を建築デザインに昇華させる設計者の骨太な思想が込められていることに気付かされる。通常の木造工法でも外断熱を高性能にすることに重点をおき、日射取得を有効に使って関東地方で暖房をほとんど不要にすることがコストパフォーマンスとして非常に効果的であることを竣工後の実績で証明している。そうなると問題は夏期の通風の工夫であるが、それを担う床下換気口の制御などにも動力や電子制御に頼らないシンプルな方法をとることで、とにかくコストをかけずにゼロエネルギー住宅を達成することにこだわっている。感心させられることは、そのミニマリズムな思想が建築としての美しさと通じていることにある。冬期に夜間の放射冷却を防ぐ南面の開口部の断熱板戸と無塗装のベニアに徹底して統一されたインテリアの調和や、外断熱に対応して先付けされた既製品サッシが生む、彫りの深い開口部の表情や、日射角度を考えた勾配屋根内部を傾斜天井として使うことで、ぎりぎりまで開口部を低くするといった、さりげない作法で環境性能を簡素な洗練さに凝縮する思想が貫かれている。それは施主の生活意識を見事に体現しているように思えたが、聞くと依頼を受けた時点では省エネにも環境共生住宅にもそれほど関心が高かった訳ではなかった施主に、ゼロエネルギー住宅を提案し、これまでの実績や、コスト試算などを通じてその意義を提案したのも設計者であったそうだ。結果的に老後生活における健康維持と経済的安定のために大変喜ばれ、竣工後はHEMSのグラフ推移を見るのが施主の毎日の楽しみにもなったという。この老後住宅のサスティナビリィティには、功名心も肩肘のはる責任感もなく、ただ身の丈にあった質素さを追求する真摯な態度が生んだ美学があり、改めて心が洗われる思いがする。

 

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