IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

一般財団法人建築環境・省エネルギー機構 理事長賞(新築部門)

「陽の家」

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建築主個人
設計者啓作舎一級建築士事務所
施工者啓作舎一級建築士事務所
建設地静岡県浜松市
構造木造
階数平屋建
延床面積68m2

講評

夫婦と娘のためのコンパクトなパッシブソーラーハウスである。設計者でもあるオーナーは、1970年代のオイルショックを機に、石油/石炭等のエネルギー依存生活に疑問を持ち、当時から自邸は「パッシブソーラーの住まい」と確信していたという。完成した住宅はまさに、現代のデジタル時代に再考すべき、アナログの温熱環境要素が満載の住まいである。

敷地は市街地から数キロ離れた郊外地で、北に山、南に清流を臨む。土地探しから始めて出会った敷地は、価格が手ごろなばかりか、道路との間に約1mの段差があり、自身のイメージする「地熱利用のパッシブソーラー」を実現するのに好都合であった。購入後、6年の歳月をかけてようやく完成に至った。使用木材も環境的配慮から、捨て伐り放置となりかねない間伐材を利用して造られた。完成後2年が経った今も、70m2弱の母屋でシンプルに暮らしている。卓越風を誘引する目的で2棟のボリュームで構成された配置となっているが、北側「離れ」を将来オフィスとする計画である。

南側立面を決定付ける太陽熱利用の温風換気システムは、道路と敷地の段差を利用して、縁側下に60度の角度で立てかけられた黒色鉄板で製作され、集熱した温風をシロッコファンで直接床下に導入するシンプルな仕組みである。ファンは温度センサーと連動しており、冬は23度、夏は35度に設定されている。二重屋根から1.8mはね出した庇によって、冬季日射のダイレクトゲインが有効に得られる。全ての開口部には断熱戸が設けられており、内外の温熱環境をコントロールするために、夜は基本的に通年使用されるという。断熱戸は発泡系材料を障子紙で包み、室内側にアルミシートを貼った仕様で、軽く、操作も楽で、また経済的である。雨水利用は、床下や屋根に敷きつめられた塩ビパイプが貯留タンクの一部を兼ねている。

オーナーの言う「原始的な原理」に則った本住宅は、CASBEE戸建-Sランクを達成しているが、なによりも一番厳しいクリティックであろう夫人に高く評価されている。高価な設備機器や高度な技術を採用すれば高い性能が保証される現代だからこそ、今一度、根本的な温熱環境の原理に立ち戻ることの意味を考えさせられる住宅である。


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