IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

住宅金融公庫総裁賞

「T邸」

建築主個人
設計者(有)北海道建築工房
施工者(株)長澤建設
建設地北海道蘭越町
構造RC+木造
階数平屋建
延床面積118m2

講評

 神戸での会社勤めから脱して北の大地に移り、新しい伴侶を得て農業を営む高橋明人氏の、第二の人生を支えるこの住まいは、雄大でドラマティックな魅力に充ちている。吹雪を避けて南側間口一杯にとった庇の空間は、農作業に疲れた体の癒しの場であり、ジャガイモなどが育つ先下がりの農地越しにエゾ富士を遠望し、隣家は数キロ先、夜は漆黒の闇という周辺環境と、シンプルでコンパクトな室内空間の間にあって、多彩な光景を演出し、自然と豊かに対話する風景的な媒体となっている。

 一昨年度、国土交通大臣賞受賞の小室雅伸氏(有限会社北海道建築工房)は、熱容量の大きなコンクリートの躯体とタイル張りの床を、断熱材とアルミクラッド3層ガラスの木製サッシでしっかりと包み、木架構と金属折版によって構成された芝貼りの二重屋根を置いて、冷房なし、暖房もFFストーブ一台という省エネの「スケルトン」を実現している。

 サステナブルの要件のひとつである長寿命性は、耐久性とともに耐用性が必須だが、引き戸を駆使した間仕切りや配管ピットによって自立する設備など、変化と更新性に優れた「インフィル」を生み出している。垂木構造の集成材や、天井の仕上、芝屋根の下地チップにカラマツを用いるなど地域材活用にも積極的な工夫が試みられ、より良い風土的な住まいを求める北海道の建築文化の土壌に育まれた、心身ともに快い生活環境を創り出している。

 建築が人間にとってエコロジカルであることは、生物生態的な室内環境であるばかりでなく、文化的であり光景的、風景的なことだと素直に感じさせてくれる。


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