IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

建築環境・省エネルギー機構理事長賞(大規模建築部門)

秋田市庁舎

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所在地 秋田県秋田市
構 造 RC造、一部PC造、地下1階柱頭免震構造
規 模 延床面積30,946.86㎡ 地上7階/地下1階
建築主 秋田市
設計者 (株)日本設計
施工者 清水・千代田・シブヤ・田村建設工事共同企業体/新菱冷熱工業(株)

講評

秋田市庁舎は東日本大震災直後に実施された設計プロポーザルを経て、寒冷地に建つ災害に強い環境建築を目指して設計された。2016年に竣工し運用開始後3年が経過するが、日本海からの季節風が強い寒冷地に建つ「秋田スタイル」の市庁舎としての合理性が随所に見られ、高い快適性を維持しながら高効率に運用されている。

建物形状は「市民の座」と呼ぶ中央の象徴的なアトリウムの周囲を行政・議会・市民サービスセンターの3ゾーンが囲むRC(一部PC)造で、地下に駐車場と柱頭免震構造を有する。非常用発電機など重要設備は最上階に配置され、津波や洪水時に外部から上階テラスへ直接上がる避難動線の確保、非常時には自然換気や自然採光等でエネルギーを使わなくても使用が可能な工夫など、大震災の教訓が活かされた設計になっている。

建物外周部にはメンテナンスバルコニーを廻らし、雨に濡れない部分に熱処理をした象徴的な杉材のルーバーが備わる。このルーバーは太陽高度により日射遮蔽と天井への導光の機能を果たす。外断熱のカバーにも熱処理をしたタモ材が使われるなど秋田の産物が随所に活用され、PALは207となっている。

中央のアトリウムは熱溜りを十分に確保し、トップライトからの光を杉材のルーバーで反射させて空間へ導き、オフィスや市民の座に活気をもたらしている。また、中間期は自然換気の経路となり、冬期は上部の熱溜りから、夏期は下部居住域の空気を導入外気との熱交換に利用するなど、建物全体の環境調整装置としても機能する。

梁下端を露出させて天井高を確保した執務室は床染出し空調により静穏な気流環境と良好な放射環境を提供し、開度設定が容易な網戸付き突き出し窓は執務者の環境調整への関与を明示している。

熱源システムは、豊富な伏流水に着目して基礎杭とボアホールを用いた地中熱ヒートポンプと蓄熱槽の組み合わせをベースとし、空気熱源ヒートポンプと冷温水発生機を組み合わせ、柔軟性の高い運用が可能なシステムになっている。年々ヘビーな使われ方になっているにもかかわらず、最近1年間の一次エネルギー消費原単位は862MJ/㎡年と優秀な値で、CASBEEはSランク、ZEB Readyを達成している。

秋田の地域特性を踏まえ、素材・技術及び文化により魂を与えられたこの市庁舎は、新たなシンボルとして北の大地に根を下ろしている。

 

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