IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞(小規模建築部門)

「六合エレメック本社ビル」

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建築主六合エレメック(株)
設計者(株)日建設計
施工者(株)竹中工務店 (株)ダイダン
建設地愛知県名古屋市
構造鉄骨造
階数地上4階
延床面積1,155m2

講評

 小規模建築をサステナブルに仕上げることは敷地やコスト面の制約もあって常に難題が多いものである。設計者はこの小規模建築特有の困難さを、「建物高さの制約から温度差による自然換気が利用できない」、「空調の省エネルギーは個別分散システムの性能に依存してしまうことが多い」、「中小ビル向けのエネルギーマネジメントIT機器が進化していない」と捉え、こうした課題に対する解を見出している。

本建物は住居地域に建つ4階建て、延床面積1,155m2の事務所ビルである。敷地が細長く低層の建物における自然風の活用が本建物の基軸である。敷地の側面に立てた高さ11m奥行き24mの集風ウォールと称する壁と、集めた自然風を建物の奧まで運ぶコリドールとが相まって居室全域に風を供給する。温度差換気を促進するための潜熱蓄熱材(PCM)を活用したソーラーチムニーもあるのだが、この集風ウォールのしつらえが本建物の眼目といってよい。自然の僅かな風圧を受け止めるためにコリドールをノコギリ状にして開口部を設けるという理にかなった配慮もしており、実績として12~14回/hの換気回数を達成している。

滞在時間の多い事務部門には個別空調システムにPCMと放射パネル組み合わせた複合化の工夫もしている。これにより放射パネルからの冷放射も得られ、気温が少し高くても体感温度を低くでき不満足率を下げている。中小ビルに導入できるエネルギーマネージメントシステム(EMS)は進化の過程にあり今後の開発に待つところが大きいのが現状であるが、本建物では他のシステムにも接続可能なIT基盤を用いて独自のEMSシステムを構築し、それがユーザーによって適切に活用されている。

こうした工夫によって達成された環境やエネルギーの実態は綿密かつ丁寧なトレースでエビデンスが示され、年間の一次エネルギー消費量は791MJ/m2年と、平均的な中小ビルに比し40%も低減していることも実証している。

ところで、世間には自己主張が強すぎたり周囲に気を遣うことのない傍若無人な建物がよくあるが、この建物は目立ちはしない存在感があり周囲の住宅地に溶け込んでいる。その美しく清楚な佇まいは気持がいい。敷地の奥にある隣地に向けて張り出した敷地には大きな木を植えて、周囲建物との共有的な中庭に仕立てるという気遣いもある。こういう環境配慮はサステナブル建築に欠かすことのできない基本であろう。

以上のように、本建物は中小ビルの課題を真摯に捉え、建築設備や建築環境工学の原理を活かして省エネルギーや環境負荷削減を目指しただけではなく、建築総体としてのサステナブル建築を造る設計姿勢がある。今後の小規模建築のあり方を考えさせる一品である。


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