IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞(事務所建築部門)

「鹿島技術研究所 本館研究棟」

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建築主鹿島建設(株)
設計者鹿島建設(株)
施工者鹿島建設(株)
建設地東京都調布市
構造RC造
階数地上5階地下1階塔屋1階
延床面積 8,914m2

講評

 この作品は、従来分散していた諸施設を統合した知識創造の場で、先進的な環境保全技術の確認の場でもある。また、閑静な周辺環境への配慮も相俟って、端正なフォルムに仕上がっている。

クライアントの多様な要求に対して「足し算」で応えるソリューションに自ら疑義を抱き、この作品では極限まで建築要素を削ぎ落とす「引き算」の建築を標榜している。ともすると減点要素を避けオプション満載の建築を提供しがちな最近の風潮に逆らうかのように、自社の案件とはいえこの決断は光彩を放っている。

従って、業界の一般常識とは異なる判断が随所に見られるが、いずれも先入観に捉われずに見れば道理に適ったもので、かえって新鮮に見える。例えば、手動で開閉する窓は、想定される最悪の事態は人間本来の力で克服できるという確信であり、OAフロアの排除は、透徹した将来予測がもたらした結論であろう。また、パラペットのない屋上防水の収まりは、技術が必ずしも単調に進化しないことへの複雑な回答であろう。さらに、敢えて断熱性の低い単層ガラスを採用したことは、緩衝空間の工夫次第で諸問題を解決することができるという、現在の通念への反逆でもある。とりわけ、通常は自由度の高いマルチパッケージ型空調機が適用されるところを、シンプルで安定した性能を発揮する店舗用パッケージエアコンを採用したことなど、随所に饒舌ではないが強い信念に基づいた静かな主張がちりばめられている。建築と設備が従来の省エネルギー手法に盲従するのではなく、創意工夫によって高品位かつ合理的な建築にまとめられているのが印象深い。

スーパーゼネコンの技術研究所にして郊外型オフィスという、ともするとサステナブル建築のショーケースとして饒舌なボキャブラリーで満艦飾になりがちなところ、既成概念の再構成という安易なアプローチを意識的に捨てた点は、敬服に値する。今後のサステナブルな建築の在り方を本質的に追求した好事例として、他の建築とは一線を画するものと考える。


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