IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞(事務所建築部門)

「山梨市庁舎」

建築主山梨市
設計者(株)梓設計
施工者(株)フジタ
建設地山梨県山梨市
構造RC造、S造
階数5階建
延床面積18,518m2

講評

 この建物は、これまで精密機械の工場として用いられていた建屋を、市庁舎へと改修、用途変更(コンバージョン)したものである。設備的には目新しい提案がされている訳ではないが、既存躯体を利用することを通じて、建設に関わる省エネルギー、省資源が目されている。すなわち、イニシャル・エネルギーの削減という、ランニング・エネルギーをターゲットとするのとは異なる、別の側面からのサステナブル建築が示されたものといえよう。様々な制約はあったであろうが、あえて既存躯体を活かす計画を立案した発注者の姿勢を高く評価したい。

工場建家を庁舎へと転用するにあたっての建築的な解法をみてみると、耐震性能の不足に対してPCのアウトフレームを付加し、奥行きの深い建家平面に対しては中央部に吹き抜け空間を設けるという提案がなされている。既存躯体の性能や特性を十分に踏まえた提案である。大仰ではないかと思えたPCのアウトフレームの補強であるが、現地で見ると従前の建物がRCであり、また全体のスケールが大きいことから、違和感なく受け止められた。さらに環境制御、メンテナンス、避難等にも有効に機能するスペースとして位置づけられており、計画の練度が感じられた。一方、中央部に設けられたコミュニケーションラウンジは、トップライトの大きさが小さくなったことや天井面を黒に塗っていることから、薄暗さ感がのこり、意図したような開放性が獲得されていないように感じられた。コストの制約があったのであろうが、惜しまれるところである。

今後、縮小していく日本社会においては、これまでのように敷地を更地にして新たに建設をするスクラップアンドビルドを前提とはできなくなるのではないか。既存ストックを高度に活用していく、このようなコンバージョン建築が増えていくことと思われる。そこで既存構築物という制約条件をどう乗り越えるかが問われるが、そこではいままで以上に、発注者、設計者、施工者の高い意識と相互の意思疎通が求められる。本プロジェクトはその好例として位置づけられよう。


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