IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞(商業・サービスビル部門)

「かごしま環境未来館」

建築主鹿児島市
設計者(株)日建設計 (有)下舞建築設計事務所
施工者(株)植村組 南生建設(株) 日本電業(株) 興南施設(株) (株)エコロン (株)大鹿電業
建設地鹿児島県鹿児島市
構造RC造、PC造
階数地上2階建
延床面積2,992m2

講評

 鹿児島市を二分するように流れ、錦江湾に至る甲突川のほとりにあるこの建物の設計コンセプトは、建物の存在そのものを環境改善に役立てようというところにあった。環境を守ろうとする人々の意識の啓発にあるという建物の目的を明示し、環境負荷を減らすというだけでは十分ではなく、存在するだけで周辺の環境改善に貢献できるものでなければならないという積極的なアピールである。

このようなコンセプトに基づいて、建物が周辺に溶け込むように、目立たないように、地面から連続するような緑化屋根がイメージされた。細長い敷地の長手方向に、建築が新しい地形をつくるように立ち上がる。これによって、ほぼ敷地全体が緑に覆われ、敷地内のビオトープとともに、地域の緑の公園として地域に開放されたことになる。ヒートアイランド防止、周辺の微気候形成にも貢献する。シラスを用いた芝土はやや厚め、重めだが、地場産材として独自に開発され、地産地消にも一役買っている材料である。

そばを流れる甲突川も大きな環境資源のひとつだ。この建物では、豊富な地下水を熱源として利用したヒートポンプで暖房・冷房・空調を行っている。地下水は地下30mからくみ上げられ、熱が回収されたあと地中に戻される。展示スペース・資料室の床には水循環用のパイプが埋め込まれ、輻射冷暖房を行っている。この展示室の床には、鹿児島市民文化ホールのステージ改修に伴って解体された材木が再利用されている。エントランスホールには、室内に露出させた輻射暖冷房放熱機が置かれ、子供たちの環境学習にも役立っている。水の特性を知り、有効利用を学ぶ格好の教材だ。 地中熱をより直接的に活用するため、導入する外気を予熱・予冷するアースピットもある。アースピットには、この地特有の火山灰を沈下させ、除去して導入空気を浄化する効果もある。

年間を通しての詳細な運転操作マニュアルが作成されていて、できるだけ自然エネルギーを活用できるよう、季節別の対処方法がきめ細かくかつ具体的に示されている。興味があることに、建物を管理する側が強く手動にこだわっていることだ。省エネルギー、自然エネルギー利用、資源の再利用といった技術の評価に加え、異なる年代の多数の人々が建築自体の体験を通して環境を学ぶ仕組みも評価できる。


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